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2020.12.09.Wed

ゼロからの挑戦を「富山のDNA」で乗り越え、次はソーシャルデザイナーを目指す / 第18回FRaU WFH*(うふふ*) Meeting開催報告

2020年12月2日水曜朝9時からの第18回FRaU WFH*(うふふ*) Meeting。
62名ほどの方にご参加いただきました。

この日、関編集長からは、先週、11月27日(金)に発売となったFRaU SDGs MOOK MONEY 2020のご紹介がありました。
https://www.amazon.co.jp/dp/4065217636

今、MOOKの働き方号を考えていて、このうふふ*でやっていることも関連させられたらと思っています、と関さん。表紙は女優の蒼井優さんです。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/77694

是非お手に取ってみてください。

『ゼロスタートからの現代の北前船商社』

この日の働き方の新しい波は、12月2日(水)の「働き方の新しい波」は『ゼロスタートからの現代の北前船商社』
 ~商社がトレーディングからソーシャルに変革~をテーマに、
冨田昇太郎さん
(ホクセイプロダクツ(株) グループ社長)
にお話いただきました。

「見習いソーシャルデザイナー」として生きる

後輩たちにワクワクする社会を引き継ぎたいという想いで、ご自身の会社を経営しながら国内外の拠点を飛びまわる合間に大学生に教えたりもしているという冨田さんは、ご自身のことを「見習いソーシャルデザイナー」だと語ります。

冨田さんの会社の本拠地があるのは富山県高岡市。富山県は日本海沿いにあり、立山連峰やいくつかの漁港もかかえています。高岡市は石川県寄りに位置しています。

もともとアルミという素材を加工して、販売していたアルミ商社でしたが、この10年で、カナディアンカヌー、フィンランドのご当地キティのグッズ、スウェーデン製の氷の上でも滑らないシューズ、地元で生産された野菜のディリィバリなど、地域の活性化につながる素材やソリューションを販売するようになりました。実際にこの10年で売上高を3倍に伸ばすことができました、と冨田さん。
そしてこの10年間の冨田さんのチャレンジのストーリーをお話くださいました。

会社のビジネスをリセット

ワクワクした社会にして後輩につなぎたいと、東京の大企業を退社し、富山にUターンして、金属商社を引き継ぎました。ところがこの頃すでに、高岡市の中心街が寂れ始めていました。社員もやる気を失っていると感じました。そして経済もリーマンショックの影響をひきずって、低迷していました。

まずは本業であるアルミの分野でのビジネスで試行錯誤を重ねていました。取引先から要求される原価低減をそのまま行うと会社の経営が成り立たなくなるくらい、低コストでの供給を求められたりもしました。そうして、北陸の中だけでの営業に限界を感じるようになったのです。
父から引き継いだ会社は、北陸地区の中だけで、アルミだけを取り扱う専業トレーディング会社でしたが、そこから抜け出す決心をしました。

私の生まれ育った富山とつながりのあるものについて思い起こされました。
その一つは江戸時代から明治時代にかけて、大阪と北海道を日本海回りで船が行き来し、途中で日本海沿岸に寄港していた北前船(きたまえぶね)。富山のDNAでもあった北前船が各地域の大きなパワーを運び繋いでいたように、地域の価値を世界に繋ぐ“現代の北前船”を志そう。私たちも各地域のプロダクツを繋ぐことで、新たな価値を生み出そうと考えました。

またもう一つの富山のDNAは、「先用後利」(せんようこうり)のスピリット。先に相手へ利益をもたらし、自分の利益は相手が得したあとから。先に商品を使わせ、後で使った分だけ代金を受け取るという、薬売りが日本各地を開拓した時に発明した商売形式は、私たちのDNAにいつの間にか刻まれていました。この考え方が、現代においても変わらず通用することに気がついたのです。

10年前、初めての海外進出は、高岡と同じ雪国ということでフィンランドに行きました。
地元高岡の伝統工芸である鋳物製品を懸命に売り込みました。当初、現地の方々からは興味ffを示してもらえませんでした。しかし、何度も足を運び、製品そのものの話に加えて、故郷高岡の歴史や、鋳物職人のストーリーを織り交ぜて話していくうちに少しずつお客様の反応がよくなっていったのです。回り道のように見えても、故郷の伝統や歴史を掘り下げて伝えることが、日本の北陸というHomeを離れて、Awayの地である北欧では突破口になりました。

拠点の定め方

このフィンランドでの経験を足掛かりに、スウェーデン、米国(オレゴン州ポートランド)をはじめ、国内では北海道、沖縄、京都といった場所に、自社の拠点を設立し、現地でのネットワーク作りを始めていきました。私達は大都市だからという理由でオフィスを置いていません。その町や地域のために「役に立つことがしたい」と言う思いから進出するスタイルをとったため、オフィスと人を置いているのは自分が大好きな町、地域だけとなっています。

ビジネスの進め方

初めて行くところでゼロからのスタートだったため、チャレンジあるのみでした。
ここでは知り合いもいなければ、もともと持っていたものもない。そこで、アルミや金属などの本業ビジネスだけにこだわらず、これまで扱ってこなかった商品やサービス分野に領域を広げていくことになりました。

それぞれの拠点で、ゼロスタートでビジネスを始めて気が付きました。
人は簡単には売ってくれないし、買ってもくれない。
商社はトレーディングが基本だが、何よりも人の役に立つことをしなければ、ビジネスのチャンスはないことを各拠点で再認識したのです。

自らが居心地の良い地元経済界と本業を離れ、Awayの地に飛び込みサバイバルを繰り返す日々は、自分を強くし、変化に対応する力が養われることになりました。ANAのキャッチコピーではありませんが、まさに”鍛えた翼は強い”ということでしょうか。

今私たちの会社は、まさに右から左に流す金属商社から地域社会に役立つ「Social Good」なトレーディングカンパニーに変化しようとしているところです。会社のメンバーは多様性に富み、国内外ともに現地採用のメンバーが、自分の判断で商材を選び、他の拠点メンバーと連携し、地域の役に立つ活動を日々行っています。

実際の事例をいくつかあげて説明します。
1つ目は、アメリカのスタッフと富山のスタッフが連携し、オレゴンのフルーツピューレを富山に輸入したケースです。ここで、富山のクラフトビールメーカーがフルーツピューレを活用し、新たなフルーツクラフトビールをつくったところ、世界の大会で金賞を受賞することができました。

2つ目の事例は、富山から沖縄に赴任したスタッフと沖縄で採用したアメリカ人のスタッフが連携して、米国嘉手納空軍基地周辺のアメリカ人コミュニティに新鮮な野菜をデリバリーしたケースです。沖縄のアメリカ人スタッフは日本語もできるので、日本人スタッフとは日本語でコミュニケーション。アメリカ人スタッフが取引先と英語でコミュニケーションしています。

3つ目は、北海道のスタッフとアメリカのスタッフが連携して、アイヌの伝統工芸品を米国オレゴン州に輸出し、ポートランドに日本庭園で特別展を行ったケースです。

この10年を振り返って

自分自身がこれからかかわっていきたいと感じた拠点に進出して、アルミにこだわらずにそこで必要とされているものを提案するビジネスを展開するようになって、一番変わったのは自分自身でした。縁あって関わることになった方達の心を満たすことが私自身のやりがいになっていたのです。会社のビジネスのスタイルが、商社の利益のみを追求するスタイルから社会課題の解決を目的とした営業スタイルに変わりました。会社のスタッフ達も、
私に協力してくれて、いつの間にか会社のメンバーみんなでソーシャルビジネスに取り組むようになっていたことに気づきました。会社のメンバーそれぞれが、自己実現のできる「やりがい」のある場所を見つけ出してくれています。

東京からUターンした当初、後輩たちのために良い社会、良い未来を築きたいと一所懸命に励んでいた時は、どうしたらよいのかわかりませんでした。そんな中、ビジネスの場を富山や北陸に限定しないものの、北前船・薬売りの「富山DNA」ともいえる、かかわる人達のことを第一に考えて、各地域のプロダクツを繋ぎ、「先用後利」のスピリットを大切
にしたことが、道を開いてくれました。

振り返ってみると、自分が変わり、私の周りが変わっっていました。後輩たちの姿を見ていると、私が10年前に目指した、ワクワクする社会」に少しずつ近づいているように感じられます。
従来の商社の仕事はトレーディングという発想が強かった印象がありますが、これからの商社の仕事は社会課題の解決を図るソーシャルビジネスに転換していく可能性が高いのではと考えています。私たちはこれからも、国内外のネットワークを駆使し多様な組織や
人々を繋いで社会デザインを新たに構築するソーシャルデザイナーとなることを目指してチャレンジを続けていきたいと思っています、と冨田さんはプレゼンをまとめられました。

***

なぜグレートリセットしようと思ったのか?

なぜ引き継いだ会社をこれまで通りの形で続けようとせずに、グレートリセットしようと思われたのですか、と箕浦さん。
東京からUターンして、会社をそれまで通りに北陸での営業だけでやっていくだけでは限界を感じ始めました。何よりもパイオニア精神が失われていると思ったのです。ある取引先から強く原価低減を求められ、コストカットだけで勝負しなければいけないような世界にい続けるのではなく、離れようと決心しました。人は長期で育てることが大切です。そうしているうちに自分も変わり、成長することができたと感じています、と冨田さん。

商社が社会課題解決型に向かっていくということだったが、それは、あらゆる商社にあてはまるのか?

商社が社会課題解決型に向かっていくということだったが、それは、あらゆる商社にあてはまるのかという点についても、箕浦さんが質問されました。
商社は従来の、資源を扱う資源会社から社会課題解決型に向かっていくのではと考えています、と冨田さんはお話されました。

今の冨田さんをつくっている、ご両親様からのお言葉や大切にしている価値観は?

どんな言葉をご両親から言われていましたか。
辛い体験をしたり、厳しい状況に置かれたときに文句や愚痴を言ったり悲観することは簡単です。にもかかわらず、それを新しい発想につなげたり、諦めずにチャレンジするという形で、ポジティブな方向にご自分でシフトしたという点が素晴らしいと感じました。その背景にお父様やお母様のお言葉や価値観があるのではないかと思ったのです、と島田さん。

母からは、「正義を常に意識し、社会で活動しなさい」といわれていました。
母の言葉以上に、父から言われた言葉が心に残っています。父からはたくさんいい友達を作るように言われていて、その言葉を胸に過ごしてきました。今は後輩や学生ら、若い人達を育て、勇気づけることを大切に考えています。

北陸銀行と北海道銀行の経営統合は、北前船がつないだ!

アルミという素材を加工して、販売していたアルミ商社が、ビジネス構造を変えて、地域が活性化する素材やソリューションを売りはじめた。そのDNAが北前船と富山の薬売りにあったといういいお話を聴かせていただきありがとうございます、と石川さん。
北海道の経済がさびついてきていて元気がなくなり、北海道をささえた北海道銀行の経営も危うくなった時、手を差し伸べたのは、世界の銀行でも日本のメガバンクでもなく、
富山の北陸銀行でした。これは北前船のつながりによるM&Aだといえます。江戸時代の北前船の時からの昔からの資金力とネットワークに基づいているのではないか。今でも北海道銀行は、名前を変更することなく北海道銀行のままで営業しています。まさに血の通ったM&Aの実現です。北海道銀行の名前を変更しなかった北陸銀行はすごいです。そのほうが地域から理解を得られると考えたのでしょうか。この北陸銀行と同じように、地域のことを気にしながらビジネスをしているのが冨田さんの会社のうまくいっている要因だと思います。

実は祖父が北陸銀行に勤務していて、小樽にも10数年いたので、北海道ともつながりがありますと、冨田さん。またこの日は冨田さんの沖縄の会社で活躍している大森さんも参加。大森さんの祖父は富山の薬売りで、まさに富山のDNAを受け継いでいるとのこと。

冨田さんがアルミ商社からゼロからビジネス構造を変えた話が、皆さんの心に響いたと思います。ソーシャルグッドな地域とつながっているソーシャルグッドトレーディングカンパニーとして、冨田さんの会社にはこのままずっと成長してほしいと石川さんはまとめられました。

関編集長の編集後記

冨田さんのゼロベースからの話、とても元気をもらいました。
元気をもらえる、でつなげると、先週島田さんと行った林野庁主催の「森林×SDGs体験ツアー」の話をしたいと思います。
森に入って散歩したり、寝っ転がったりするだけで、木々の音や匂いまで楽しめました。
森林セラピストさんいわく、「森はヒトを守ってくれる。ヒトは森を守らなければいけない。森は、ヒトが遊びに来るのを待っている」
ストレスフルなこの時期こそ、皆さんも森に遊びに行きましょう!

冨田さんの富山県も、自然豊かと聞きます。富山県出身の女優の室井滋さんと一緒にお仕事したことはありますが、まだ富山に行くことができていないので、ぜひ富山の森林に行ってみたいです。

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本日12月9日の第19回RaU WFH*(うふふ*) Meetingの「働き方の新しい波」は、「パソナの淡路島移転」について、パソナ農援隊の神智実さん
にお話いただきました。淡路島の海や淡路島のオフィスのご紹介もあり、会社の移転や2拠点生活についてリアルに考えられるいい機会となりました。

来週12月16日の第20回RaU WFH*(うふふ*) Meetingの「働き方の新しい波」は、「あなたにとっての豊かさってなんですか?幸せってなんですか」(仮題)について、ふくおか食べる通信 編集長 梶原圭三さん
にお話いただきます。

お申込みまだの方はこちらから
https://forms.gle/vafXrW4vSPE5zsEM9

FRaU WFH*(うふふ*) Meetingは、毎週水曜日朝9時から10時。お時間取れるタイミングで、ぜひご参加ください!

文:宮崎恵美子

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第0回(2020年7月29日レポート):WFH*については、こちらでご覧ください。
https://note.com/teamwaa/n/n22a021812f1d

WFH*の読み方は「うふふ」 / 第2回FRaU WFH* Meeting開催報告(2020年8月12日レポート)
https://note.com/teamwaa/n/n18a7a94ee6fc

政策につながる組織のミッションとして行えたからこそ、環境省の「選択と集中」プロジェクトは成功した / 第3回FRaU WFH* Meeting開催報告
https://note.com/teamwaa/n/n1b74d08d63dc

ロンドンで、日本の「働き方」がすべてではないと気づいた / 第4回FRaU WFH*(うふふ*) Meeting開催報告
https://note.com/teamwaa/n/n72e227a57b21

ワーケーションで、人や自然に感謝し、幸せを感じられるようになろう! / 第5回FRaU WFH*(うふふ*) Meeting開催報告
https://note.com/teamwaa/n/n0bf44fc20fda

“はたらく”に歓びを 誇りを持てる仕事をしていこう ! / 第6回FRaU WFH*(うふふ*) Meeting開催報告
https://note.com/teamwaa/n/n54aeaf037d4f

自分の得意なこと・やりたいことでキャリアを築くには / 第7回FRaU WFH*(うふふ*) Meeting開催報告
https://note.com/teamwaa/n/n4529ab67eb37

真のダイバーシティにつながる働き方とは? / 第8回FRaU WFH*(うふふ*) Meeting開催報告
https://note.com/teamwaa/n/n49a14e4cef62

2拠点生活から見えてきた大切なこととは? / 第9回FRaU WFH*(うふふ*) Meeting開催報告
https://note.com/teamwaa/n/n1e9bdedba70e

楽しみながら仕事をしていくコツは?/ 第10回FRaU WFH*(うふふ*) Meeting開催報告
https://note.com/teamwaa/n/n51b79973453e

週休3日で、自分の時間を自由に創造的に使えるようになる !! / 第11回FRaU WFH*(うふふ*) Meeting開催報告
https://note.com/teamwaa/n/n1b92b13d48dc
乗り越えてきた痛みは、必ず誰かの助けになる / 第12回FRaU WFH*(うふふ*) Meeting開催報告
https://note.com/teamwaa/n/ndf37a36446e0 

サラリーマンの幸せは”マネージャー”で決まる / 第13回FRaU WFH*(うふふ*) Meeting開催報告
https://note.com/teamwaa/n/n6b5a34dcb380

変化する力と自分軸で、どんなときも乗り越えられる / 第14回FRaU WFH*(うふふ*) Meeting開催報告
https://note.com/teamwaa/n/na3f68ed16163
誰一人取り残さず、CSRが当たり前の世界に/ ~アイドル活動で広がるキャリア~ / 第15回FRaU WFH*(うふふ*) Meeting開催報告
https://note.com/teamwaa/n/n60b57c11cccd

記憶をプレゼントしながら、今を大切に生きよう / 第17回FRaU WFH*(うふふ*) Meeting開催報告
https://note.com/teamwaa/n/ncac6df4da830